この記事ではブライダルシーンにおける
複製権をクリアするための方法について解説いたします。
複製権については↓の記事で詳しく載せていますので、それに目を通した前提で本記事では解説をしています。
複製権に関わるCDやDVDを使用する際にJASRAC等の著作管理団体に申請するのはお勧めできません。
楽曲利用の申請をお勧めしない理由
申請をお勧めしない理由は単純です。
申請する時間とお金がもったいないからです。
ただでさえ結婚式の準備には時間がかかります。
それなのに著作権について全く理解していない人が
著作権を理解して・・・
申請する方法を調べて・・・
実際に申請をして・・・
こんな事に手間と時間を使うのは非常にもったいないです。
結婚式で使用する曲の数にもよりますが、楽曲の複製権の許諾を得るための申請先は非常にややこしいのです。
なぜそんなややこしい申請を行うはめになるのか。
その説明をするためにはまず著作権と著作隣接権について理解しておく必要があります。
ややこしい著作権と著作隣接権の違い
架空のアイドルグループを例に簡単に解説します。
そのアイドルグループが新曲をリリースするときに
・作詞者(有名作詞家)
・作曲者(有名作曲家)
・歌手(アイドルグループ当人たち)
・レコード会社(録音・販売を行う)
この4つの個人・団体が携わることになるとしましょう。
この場合、このアイドルグループがリリースした曲の著作権は、
・作詞者
・作曲者
この二人に発生します。
ゼロから何かを生み出した人に対して著作権は発生するという考え方です。
では、その曲を実際に歌っているアイドルグループ本人たちには著作権が発生しないのかというと、そうではありません。
アイドルグループやレコード会社のように、著作物を世に広める役割をもつ人たちにも著作権に近しい権利が与えられます。
この場合
・歌手(アイドルグループ)
・レコード会社
この2者に対して著作隣接権が発生します。
つまり、このアイドルグループの曲を結婚式場で使おうとした場合、
著作権をもつ作詞者と作曲者、
さらには歌っているアイドルグループとその販売を担っているレコード会社
これら全てに対して許可が必要となります。
演奏権の観点から見れば、結婚式場が著作団体に許可をとることになるので特に問題はありません。
しかし、複製権に関しては新郎新婦たちが個人で許可をとらなければいけません。
著作権はJASRAC、著作隣接権は日本レコード協会がおおまかな申請先となります。
しかし、あなたは一曲ごとにJASRACや日本レコード協会に申請できますか?
結婚式で10曲分のBGMを流そうとするとして、10曲分全ての申請できる時間の余裕がありますか?
かなり大変だと思います。
しかも頑張って申請したところで、権利者の許可が出ない限りは音楽を流せないんです。
以上のことから、一個人が音楽利用の許可を得ようとするのは非常に面倒で時間が勿体ない事だと分かるかと思います。
厄介な著作権と著作隣接権の申請を一括して行ってくれる団体ISUMの存在
この厄介な複製権における著作権と著作隣接権の申請を全て一括して行ってくれる団体があります。
それがISUM(アイサム)という組織です。
結婚式場とも提携しており、複製権に関わるときにはISUMへの利用申請するように促す所もあります。
しかし、このISUMは新郎新婦のような一個人との直接のやり取りはしていないため、
式場や制作業者を通して申請する必要があります。
つまり、式場や業者に「ISUMへの申請」の「申請」をしなければいけないわけです。
メモ
◆JASRAC
著作権を管理しているところ。新郎新婦等の個人からの申請が可能です。
◆日本レコード協会
著作隣接権を管理しているところ。
新郎新婦等の個人からの申請が可能です。
◆ISUM
著作権と著作隣接権の使用申請を代行して行うところ。
新郎新婦等の個人からの申請はできず
式場や業者を介して申請を行う必要があります。
つまり現状として著作物利用の申請を行う方法は以下の二つです。
- JASRACや日本レコード協会に直接申請する。
- 式場や業者を通してISUMに申請する。
正直、どちらにせよお金はかかりますし、一から申請方法調べる手間も時間ももったいないです。
ISUMに申請するとどうなるか
ISUMで決められている料金体系は次のようになります。
■BGMとして音楽を使用するとき
・著作隣接権 1曲ごとに2000円
・ISUM手数料 上記二つを足した合計金額の10%
以上に則って結婚式のBGMで10曲使用したとします。
すると合計金額は・・・
著作権(200円×10)+著作隣接権(2000円×10)=22000円
これに10%の手数料(2200円)が上乗せになるので合計24.200円が申請料金になります。
次にムービーに曲を入れ込んだ状態で上映する場合です。
■ムービーに音楽をのせて使用するとき
・著作隣接権 1曲ごとに2000円
・ISUM手数料 上記二つを足した合計金額の10%
(上記は静止画のみのムービーであった場合。動画が入ると割り増し。)
以上に則って4分30秒間の音楽(繰り上げで5分の曲扱い)をムービーに入れて、結婚式で計3本のムービーを使用したとします。
すると合計金額は・・・
著作権(500円×5分)×3本+著作隣接権(2000円×3本)=13.500円
これに10%の手数料(1350円)が上乗せになるので、合計14.850円が申請料金になります。
この例でざっくり計算すると
24200円+14850円=39.050円がお支払合計金額になります。
・・・・これ、高くないでしょうか?
結婚式では金銭感覚がマヒして4万弱などたいしたことない金額に見えるかもしれませんが、日常生活で4万円なんてかなり痛い出費だと思います。
費用を抑えるためにわざわざムービーを自作しているというのに、楽曲を使用するためだけに何万円もお金を使うのは本末転倒です。
◆使用できる曲には限界がある
ISUMに楽曲使用の申請をする際は「ISUMの楽曲データベース」にある曲しか原則申請できません。
データベースの楽曲は発足当初、300曲しか登録がありませんでしたが、曲数も今ではかなり増えて、現在はおよそ1万8000曲以上の登録があります。(2021年2月現在)
しかし、洋楽が極端に少ないです(2021年2月現在で約700曲ちょっと)。
データベースにない曲はISUMに曲を追加してもらう申請を別途する必要があります。
つまり二度手間です。
そして、今後の洋楽の数が劇的に増えるという可能性は低いと私は見ています。
これは、ISUMがJASRACや日本レコード協会と契約を結ぶより諸外国の著作権団体と包括的に契約を結ぶ事の方が困難だろうと思われるためです。
◆結局申請に手間と時間がかかる
ISUM申請の大まかな流れは次のようになります。
ISUMのデータベースに自分の流したい曲が登録されているか調べる。
↓
結婚式場やビデオ製作業者にISUMへの申請代行を依頼する。
↓
著作使用料がいくらかかるか見積もりを確認。
↓
式場や業者に流したい曲のCDの原版や、作ったムービーのDVDを提出。
↓
結婚式場やビデオ製作業者がISUMに申請を出す。
↓
著作使用料のお支払
↓
ISUMの許諾管理番号が明記されたシールが発行されればようやく申請完了。
こんな感じです。
かなり手間がかかることが分かるかと思います。
この時間が非常にもったいないというのと、ムービーを自作する意味がないくらいお金がかかってしまうのでわざわざ申請するのはお勧めできないのです。
ISUMへの申請をするように式場側から指示があったという方は↓こちらの記事で申請方法を解説しています。
合法的に複製権から逃れられる唯一の方法
自分の好きな曲を複製権にかからないように流す方法はったひとつです。
CD原盤から音楽を流すという方法です。
そもそも複製権は公共の場でコピーしたCDから音楽を流すことが禁じられているものなので、店頭やインターネットで購入したCDそのものをそのまま流せば複製権には引っかからないというわけです。
✕ 自分で焼きこんだCDを流す
○ 市販のCD原盤を流す
DVDに焼いたムービーも同じです。
DVDの再生のタイミングに合わせて別途用意したCD原盤から音楽を流せば良いのです。
この際はDVDの音楽をあらかじめ無音にしておくか、式場のスタッフに無音でDVDを再生してもらうようにお願いしておく必要があります。
✕ ムービーに音楽を入れた状態でDVDを流す
○ 無音のDVDの再生と同時に市販のCD原盤を流す
これさえ守られれば演奏権も複製権もすべてクリアできるので、JASRACや日本レコード協会への申請もISUMを絡めた申請も著作使用料も一切必要ありません。
つまり、BGMに関しては原版のCDを全部用意していけば誰からも文句が言われないということになります。
結婚式場側から「ムービーを流す際にはISUMへの申請が必須だ」と釘を刺された時には、式場側の指示に従いましょう。
ISUMへの申請料金をなるべく減らす手法は↓こちらの記事を参考にしていください。
【最安0円】ISUMへの申請料金をできるだけ安く抑える3つの方法とは?
近年厳しくなったブライダルシーンでの楽曲著作権。 特にDVDに入れ込んだムービーを流す時に発生する複製権の処理は著作権の代行処理団体ISUMへ申請する事が一般的になってきました。 &nb ...
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iTunesやAmazonを使ってインターネットから購入した音楽データは使用できるのか?
著作権を語る上でよく物議を醸す話題が、「インターネット上でダウンロード購入した音楽データは結婚式で使用できないのか?」というものです。
結論から言いますと、使用できません。
正確に言えば音楽データを自分でCDに入れ込んだものは式場で流せないので、使用できないということになります。
先ほども述べたように音楽を自分で入れ込んだCDを公衆の前で流すことは複製権に抵触します。
結婚式場のパソコンに外部からのデータを入れ込むことは原則できないので、ほぼ100%断られます。
結婚式場で流せる音楽は基本的にCD原盤のみ。
あとは式場に用意してもらった音楽だけです。
インターネットを利用して音楽を購入する際は
データではなく、CD原盤を購入するように気をつけましょう。
複製権に関する式場側の本音
著作物の使用に関して「自作DVDを納品する際に式場側からNGが出されている」という話をよく耳にするようになりました。
好きな音楽を一つにまとめたCDの再生も、同様に断られることがあります。
しかし結婚式場や担当のプランナーによってはOKだったりと、このNGラインが大きく違うのも事実です。
複製権については目をつむって通してくれる式場がそこそこあるように感じます。
なぜ式場側の責任にもなりかねないのに複製権については黙ってしまう式場が多いのでしょうか?
その理由には次のようなものが考えられます。
- 複製権の説明が非常に難しい。
- DVDを納品されたタイミングでNGにすると、式当日に間に合わない可能性がある。
- 複製権の申請手続きは新郎新婦に行ってもらう必要がある。
- ISUMとの手続きの中でDVD納期遅れなどのトラブルが起きる可能性がある。
- CDとDVDを同時に流すやり方は式場のスタッフが当日にぶっつけ本番でやらなければいけないため、タイミングを間違えるとトラブルになりかねない。
この複製権を巡る流れの中で、式場側はいくつものトラブルを抱え込む恐れがあります。
複製権の抜け道とされているDVDとCDを別に再生するというやり方は式場側からすれば、式当日のトラブルのもとを一つ増やしかねないため好んでやりたくない方法です。
しかしこれは複製権を守るための方法なので式場側に断る理由がないのもまた事実です。
つまり
複製権を説明してISUMへの申請を進めるにしても
DVDを作り直してもらうにしても
CDとDVDを一緒に流すにしても
式場側は苦しいんです。
ブライダル業界は、著作権に携わる団体と顧客側(新郎新婦)の板挟みにあってる状況です。
だから複製権の存在すら新郎新婦に伝えずに、式の準備を進めさせる式場がいまだに多いのです。
いろんなトラブルを根本的に避けるために複製権の話もせずにプロの業者にムービー作成を依頼することを始めからお勧めするプランナーもいます。
しかし、やっぱり新郎新婦のやりたいことを優先させてあげたいというのが結婚式場や担当プランナーの気持ちだと思います。
プランナーとよく相談をした上でムービーの作成に取り掛かりましょう。
なお、著作権が始めからかからないフリー音源を使用するという場合。
結婚式にピッタリなフリー楽曲を紹介しているサイトがあります。
誰かに申請する手間も一切ないので、こちら↓を参考にしてみてください。
【必見】ウエディングムービーに必ず役立つ!フリー音楽素材サイト8選!
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